HOME » 不妊治療 » 不妊シンポジウム Q & A

不妊シンポジウム Q & A

不妊シンポジウム「今日から不妊で悩まない」(2002.9.28開催)
〜会場の皆様からいただいた質問一覧表〜

検査編

卵胞ホルモン(E)、黄体ホルモン(P)を測る意味と値の読み方は?
卵胞ホルモン(エストロゲン=E)は卵胞の成熟度を表すホルモンで、20種類以上ありますが、代表格はエストラジオール(E2)です。また黄体ホルモン(P)は排卵後にできる黄体の機能を知る目安となるホルモンです。
Eについて
自然の卵胞発育(1個の場合)では、E2の血液中濃度が1ml当たり250〜300ピコグラム(1兆分の1 グラム)に達すると卵胞が成熟したと判定します。これ位の濃度に増えると、視床下部にある性中枢にシグナルが送られ、下垂体から排卵ホルモン(LH)が一気に大量に出て(これをLHサージ=大波)これが成熟した卵胞に働くと排卵が起こります。
クロミッドを服用して卵胞発育を促がした場合、E2は卵胞1個でも500〜700ピコグラムと自然排卵時の2倍あるいはそれ以上に達することもあります。排卵直前の卵胞の大きさも自然排卵の場合18〜23ミリ位ですがこれよりも大きく25〜30ミリ位になることもしばしばです。
体外受精で多数の卵胞を同時に発育させるときは、治療周期の3日目から毎日卵胞刺激ホルモンを注射して、左右両側の卵胞の発育状態を超音波で観察し、卵胞の数と個々の卵胞の直径をモニターします。一方でE2を測定して卵胞の成熟度を調べます。原則として治療周期の3、6日目に測定しますが8日目以降も必要に応じて測ります。成熟卵胞1個当たり250〜300ピコグラムと計算して、超音波で見られたある程度以上の大きさの卵胞数に見合う量のE2が検出できれば、その卵胞は成熟していると判断できます。その日の夜にhCG(排卵ホルモン)の注射をして翌々日採卵となります。ですから、このhCGの投与時期を決めるためにもE2測定が必要です。
Pについて
Pは胚の着床に大切な役目をもったホルモンです。基礎検査では着床期(高温相の中間期)に測ります。この値が血液1ml当たり10ナノグラム(10億分の1グラム)を切れると着床がうまくいきませんので、黄体ホルモンの補充が必要です。ただしこれは、あくまで参考で、黄体ホルモンの状態は治療によって毎周期変動すると思われます。
タイミング法や人工授精をする時、チャンスなのかあるいはチャンスが過ぎているのか超音波で判断できないときがあります。このときにもPを測定し1〜1.5ナノグラムであれば排卵直前でOK、2〜2.5ナノグラム以上であれば排卵後で、タイミング的には遅いと判定します。
Pを測定するもう1つの目的は、体外受精・胚移植で移植の時の子宮内膜の準備状態を知ることです。卵巣刺激をしてhCG切り替え日(採卵の2日前)のP値が1.3ナノグラムを超えた時や、採卵当日10.0ナノグラム以上あれば、内膜の胚受け入れ状態が進み過ぎて着床率が低下しますので、その周期の移植は断念し胚を凍結保存する場合もあります。
他院で受けた検査を、もう一度受け直す必要はありますか?
基礎検査として前医でどの程度行なわれているか、また検査を受けられてからの期間にもよります。不必要な検査を繰り返すことはありませんので、できれば前医での検査結果を持参して頂くとありがたいです。
転院は言い出しにくいかも知れませんが、患者様は紹介状を書いて貰う権利がありますし、医師は記載する義務があります。遠慮なく申し出られたらよいと思います。転居や家庭の都合で、というのはよく利用される口実です。
検査をやり直すとすれば、負担が大きいのは子宮卵管造影検査(HSG)だと思います。他院で、通気や通水検査だけで大丈夫と言われている場合は、卵管の通過性だけでなく周囲の癒着も含めて調べるには不十分です。極端に言えばあまり当てになりません。またHSGの読影も担当医によって判断が異なり、実際は卵管の先端部で詰まっていても通っていると判定されたりすることもしばしばあります。当クリニックへ転院された場合、前回のHSGから1年以上経過していれば(クラミジア抗体が陽性ならもっと早く)再検査をお勧めしています。
またHSGは検査を行うこと自体が治療にもなり、これがきっかけで妊娠されることも多いのです。検査の時の痛みは個人差が大きいのですが、当クリニックでは多くの方が、「よそで聞いた話よりも楽だった」との印象を受けておられます。どうしても痛みが強い時は軽い麻酔をかけて行なうこともできます。
米国では基礎体温があまり重視されなくなっていますが日本ではどうですか?
確かに基礎体温を測定しなくても、超音波とホルモン検査でほとんどのことがわかります。しかし、タイミング法や人工授精の場合、まさにこの時がチャンスという時期をとらえるのに基礎体温が重要な場合があります。たとえば当クリニックでは人工授精の翌日、また人工授精を行うかあるいは排卵の確認のみを行うかは、基礎体温で決めています。
また、基礎体温は排卵日を推定するだけでなく排卵後できる黄体の働きを知るにも便利ですし、過去の卵巣の機能を振り返って調べられるので何かと好都合です。
もちろん患者様中には、日々の基礎体温測定が、かえってストレスを増加するという方もおられます。そういった場合は無理に基礎体温を測らなくてもかまいません。また、初診で来られる方も基礎体温なしでかまいません。
初診は生理の周期のいつぐらいに行けばいいですか?
いつでも結構ですが、一通りの基礎検査をするのに一周期かかりますので、月経の3ないし4日目に来ていただくと能率よく検査ができます。脳下垂体から出て卵巣の働きをコントロールしている性腺刺激ホルモンの検査(採血)から開始できますし、その周期のはじめの卵巣に卵胞に似た袋がないかどうか確認することもできます。初診から月経中の診察に抵抗がある方は、排卵前でもかまいません。
血液中に抗精子抗体である精子凝集抗体があるのですが、これ以外の抗精子抗体はありますか?
精子の成分は女性にとって異物ですから、これに対する抗体ができることがあり、これが抗精子抗体です。これには何種類かありますが、普通、抗精子抗体といえば精子不働化抗体といって、精子の運動能を妨げる抗体です。また、凝集抗体とは精子同士を凝集させる作用をもった抗体のことです。現在精子は7種類の抗原を持っていることが知られていますが、その全てに対して抗体ができるとは限りませんし、仮にできたとしても、それが不妊の原因になるかどうかもわかっていません。現在のところ、精子不働化抗体と凝集抗体以外は、不妊の原因として心配ないと思います。そしてこの2つの抗精子抗体もすべての性交経験のある女性に産生されるわけでなく、不妊の方全体の2%〜3%位です。
不働化抗体が不妊をもたらすメカニズムは、この抗体が血中から頸管(子宮の入り口の部分)、子宮内腔、卵管中にも出て来て、精子の運動を妨げたり、凝集させたりするからです。その結果、精子は排卵され卵管の入り口で待っている卵にまで到達できないので妊娠しないと考えられています。それ以外にも精子不働化抗体は受精そのものを妨げるとも言われています。
精子凝集抗体も精子同士が凝集するので運動性も失われ、当然受精も妨げられ不妊となります。凝集抗体の出現頻度は不働化抗体よりもはるかに低いと考えられています。
治療法は、抗体価が比較的低い場合は、副腎皮質ホルモンで抗体価を抑えておき、人工授精をします。しかし、抗体価が高い場合や人工授精で妊娠されない場合は体外受精それも顕微授精を行います。顕微授精を行った場合、抗精子抗体陽性の方は、他の不妊原因の方や原因不明の方より妊娠率が高いです。
染色体検査はいつ、どこでも受けられますか?また費用は?
染色体検査は通常、細胞の分離と培養を必要とします。したがって予約制で、休日前以外の平日にという施設がほとんどだと思います。ご夫婦の染色体を調べる場合は通常、採血ですが、特殊なケースで流産の原因を調べる場合は絨毛組織で、胎児の染色体を調べる場合は絨毛組織や羊水で、それぞれ行います。当クリニックでは生きている胎児の絨毛組織以外すべて行っていますが、どこでも受けられるとは限りません。治療中の施設でご確認ください。
費用に関しては、ご夫婦の染色体を調べる場合は保険診療で行える場合もあり、窓口負担で一人分10000〜15000円程度ですが、それ以外は私費(自費)診療になり5〜10万円かかります。
いずれの場合も染色体検査で判明した異常に対しては、治療法がありませんので十分なカウンセリングが必要です。
仕事のストレスのため生理が不順になり、血液検査でFSH、LHが100以上あり妊娠は無理と言われましたが、最近では48、14と低下してきています。希望は持てるでしょうか?
ストレス(あるいは急激な体重減少、過度の運動など)のために月経が不順になった場合、その殆どは視床下部─下垂体系の機能不全として現れ、FSHやLHは正常より低い値を示します。あなたの場合はそれとは反対にこれらの脳下垂体ホルモンの値が上昇しています。これは、言うことを聞きにくくなった(排卵や女性ホルモンの分泌が起こりにくくなった)卵巣を、何とか刺激しようとするために下垂体から盛んに指令が出ている状態で、いわゆる早発閉経です。現在の医学では卵子提供以外、明確な治療がないのが現状です。しかし、人のからだというのは、時として理論どおりでないこともあります。希望をすてずに一度は排卵に向けて治療を行ってみましょう。

一般治療編

排卵11日目に月経が来ます。黄体ホルモンを上げるにはどうしたらいいですか?
基礎体温で高温相の期間は通常14日間くらいですから、あなたの場合は短いと言えます。これを黄体機能不全といって黄体ホルモンが十分出ないために着床がうまくいきません。治療は良い卵胞をつくり、確実に排卵させることです。それでも不十分な場合は、高温期に黄体ホルモンや卵胞ホルモンを補ったり、黄体を維持させるためにhCGの注射をします。また黄体機能不全では、プロラクチンが高いことがあります。高プロラクチン血症の場合は、これを下げるお薬で治療します。
注射で体重が増えた気がしますが関係ないですか?
関係ないと思います。ただし、注射で卵胞がたくさん(10個以上)できて、卵巣過剰刺激になった場合は、からだに水分の貯留がおこり体重が増えることがあります。
同じ治療を何回くらいで次のステップを考えればいいですか?
女性の年齢や、男性因子(精液所見の程度)の有無にもよりますが、女性が30代半ばまでで特に大きな問題がなく、精子の状態も良ければ、タイミング性交法(排卵時期にタイミングを合わせて夫婦生活)を約半年、それでも妊娠に至らなければ人工授精にステップアップし約半年行います。治療を始めておよそ1年経っても妊娠しなければ体外受精に移行することをお勧めします。
この様に受精法で大きく分ければ3段階ですが、当クリニックでは、タイミング療法や人工授精の段階でも、全く同じ治療を半年続けるのではなく自然排卵で妊娠しなければ、内服薬を使って卵胞を育てたり、内服薬で妊娠しなければ注射を組み合わせたり点鼻薬で排卵させたり、その方その方に合わせた色々なバリエーションを工夫して行います。また、最終的に体外受精にステップアップされた方にも、通常の体外受精で妊娠しない場合、最新の医学情報をもとに様々な工夫を行います。
検査により何らかの要因が見つかった場合や、すでに他の施設で一定の治療を受けられている場合は、人工授精からあるいは体外受精から治療を開始することもあります。また、ご家庭の事情や通院の事なども考慮してご夫婦と相談の上、早い目にステップアップする場合もあります。
女性が37歳以上の場合は、個人差もありますが早い目により可能性の高い方法にステップアップされることをお勧めします。
子宮に筋腫があります。妊娠を妨げる位置ではないらしいのですが取ったほうがいいですか?
よく受けるご質問ですが、本当にケースバイケースです。まず、取ったほうが良い場合あるいは取るべき場合ですが、1cm以下の小さい筋腫でも子宮内腔に突出するタイプ(これを粘膜下筋腫と言います)、子宮卵管造影や超音波検査で見て子宮の内腔が変形している場合などは胚の着床を妨げるので取ります。
また、治療施設により考え方が異なりますが、当クリニックでは直径5cm以上の筋腫や3cm以上で子宮内膜に非常に近い筋腫も取ったほうが良いとの方針です。なぜなら子宮筋腫が妊娠の経過に不利な結果をもたらすことがあるからです。大きな筋腫があると妊娠された場合、切迫早産で長期入院や悪くすると早産になったり、妊娠にともなうホルモンの変化や血流の増加で筋腫がさらに大きくなったり、妊娠中に筋腫の内部が突然変性を起こして急激なおなか痛を来たすなどの危険性があります。
上記に該当しない子宮筋腫は、取らずに経過をみて、他に原因が見つからず半年あるいは1年以上、妊娠に至らない時には手術を考えます。しかし、小さくて子宮の内腔から離れている筋腫は、まず妊娠の妨げになることがありませんので手術の対象外です。
また、子宮筋腫の手術時に、子宮内膜症など他の妊娠に不利な原因が見つかるケースもありますので、同時にその病変部の処置もできます。
人工授精は毎周期可能ですか?また妊娠率はどのくらいですか?
基本的に毎周期可能です。ただし注射を何本か使って過排卵(一度に3個以上の卵を成熟させるなど)を行って人工授精をした場合(タイミング法でも同じことです)は、月経が来ても前の周期に排卵せず残った卵胞(いくつかは排卵しても、排卵まで至らなかった卵胞で、これを残存卵胞と呼んでいます)が次の卵胞発育の邪魔をする時は、1周期治療を休んだ方が良い場合もあります。単一排卵や、2個程度の排卵を目指して行っている場合は、まず毎周期可能です。
人工授精の妊娠率は、1周期あたり約7〜10%です。それでも3〜6周期行う間に、およそ4人に1人くらいの方が妊娠されます。
排卵誘発剤のHMGテイゾーとフォリルモンPの違いを教えて下さい。
排卵誘発剤には経口剤と注射薬とがありますが、経口剤は間接的に卵胞発育を刺激するのでその作用は弱いのに対し、注射薬は直接卵巣を刺激しますから効果は強力です。
注射薬は性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)製剤と総称されており、閉経期婦人の尿から精製抽出されたhMG製剤とヒト胎盤から取り出したhCG製剤とがあります。ゴナドトロピンには卵胞の発育を促進する卵胞刺激ホルモン(FSH)と排卵を促進する黄体形成ホルモン(LH)(黄体ホルモン=プロゲステロンと間違えないように)の2種類があります。hCG製剤にはLH成分だけが含まれていて、成熟した卵胞を排卵させたり、排卵した後の黄体を維持させる目的に使います。hMG製剤にはFSH成分とLH成分とが種々の割合で混合され、患者さんの状態に応じて使い分けし、卵胞を発育させます。
ところで、卵胞の成熟にはFSHとLHの両方が必要です。その周期に排卵する卵胞(主席卵胞といって一番大きな卵胞)が、月経が開始してから7日目頃に数個の発育卵胞の中から選ばれ、この1個だけが排卵するのです。自然排卵のときのFSHとLHの分泌パターンをみますと、主席卵胞が選ばれる7日目頃まではFSHが高く、その後減少しますが、LHは逆にこの時期までは低く、7日目頃を過ぎると徐々に高くなって行きます。これはLHが発育した卵胞の成熟に必要だからです。成熟した卵胞から脳の性中枢に命令が出る結果、排卵直前にはLHが大量に分泌され、これが成熟した卵胞に働いて卵胞が破れるのです。卵胞の発育と排卵はこうした仕組みで起こります。
このような自然な動きになぞらえて、FSHとLHの組み合わせを考えて注射する必要があります。ご質問のHMGテイゾーは、FSHとLHの混合割合が1:1の製剤で、通常は卵胞が充分に発育したあと成熟を促がす時に使われます。これに対してフォリルモンPは、FSH成分だけの製剤で、通常は成熟前の卵胞の発育を促がす目的に用います。
習慣流産、不育症の最近の治療法を教えて下さい。
胎嚢(赤ちゃんの入った小さな袋)が確認されてから妊娠22週目までに流産する確率は、全妊娠のおよそ15%あります。2回流産を繰り返す場合を反復流産、3回続けて繰り返す場合を習慣流産といっています。妊娠中期以降は比較的安定していますが、それでも妊娠継続が中断してしまうことがあって妊娠22週以降37週未満の出産を早産と呼んでいます。流産や早産を繰り返すために、妊娠はするものの生児が得られない状態が不育症です。しかし早産は、その原因の多くが子宮頸管炎とそれに続く絨毛羊膜炎などの感染ですので、流産とは分けて考える必要があります。
流産の治療ですが、まず原因を調べなければなりません。原因が胎児(胚)にある場合、母体側にある場合、双方にある場合があります。1回目の流産は、たまたま起こる胎児の染色体異常が50%以上を占めていますが、2回目以降は次第に減り、3回目以降での染色体異常はほぼ20%止まりです。母体側の原因として自己抗体陽性、内分泌疾患、子宮異常(奇形、腺筋症、筋腫)、感染症等さまざまな原因がありますが、この中で比較的頻度の高いものとして、抗リン脂質抗体やループスアンチコアグラントなどの自己抗体が陽性の方です。治療法としては、血液凝固を抑制して胎盤に流入する血液量を増やすため、低容量のアスピリン(小児用バファリン)やヘパリン、抗体が作られるのを抑制するため副腎皮質ステロイドを服用します。
また、明らかな原因が見付からないのに流産を繰り返す場合、母体と胎児の相性が悪いことが想定されます。母体と胎児の相性が悪いというのは、父親の遺伝子を持ち込んだ胚や胎児が、母体に免疫反応を呼び起こして、せっかく着床しても胚がうまく育たず、妊娠が継続しない場合があるのです。治療法としては母体の免疫機能を抑制する方法と逆に高める方法とがあります。抑制法としては、副腎皮質ステロイドを服用することです。母体免疫能を刺激する方法としては、夫のリンパ球で妻を免疫する方法があります。この方法は1980年代から世界的に行なわれていますが、大掛かりな臨床試行では、習慣流産に対して約10%妊娠率を高める効果があると認められています。
その他、柴苓湯などの漢方薬が有効であるとも言われています。
いずれにしても治療を始める前に、原因を調べる特殊検査が必要です。
卵管を片方取りましたが妊娠しにくいでしょうか?取った側の排卵で卵は捕捉できますか?
基本的に、残った卵管が正常で、そちらの卵巣から排卵があれば大丈夫です。しかし、もう少し厳密に言えば、卵管を片方取る場合のほとんどは子宮外妊娠ですが、その原因がクラミジア感染や子宮内膜症であった場合、どの程度それらの病変が残っているかにもよります。手術時の所見あるいはその後の検査で残った卵管の機能を評価して、最良の治療方針を決めます。卵管を取った側の排卵でも反対側の卵管が卵子を捕捉することはありますが、ごくごく稀です。卵管が残っている側の排卵日をできる限りねらっていきましょう。
子宮後屈は妊娠しにくいですか?
一時代前は、子宮後屈が不妊の原因になると考えられ、盛んに位置矯正術が行なわれましたが、現在では子宮の位置矯正だけのために手術を行うことはありません。
ただし、後屈でも癒着(例えば子宮内膜症や感染などによる)のある場合では、しばしば骨盤痛、月経痛、下腹部不快感、時に性交痛や排便痛などの症状があり、その様な時には(後屈そのものよりも)後屈の原因となっている疾患のため妊娠しにくい状態になることがあります。
hCGや漢方薬により下腹部がはれてきますが心配ないですか?
漢方薬で下腹部がはれるという話は聞いたことがありませんが、hCGの注射で卵巣を刺激すると卵巣が急に腫れてきて下腹部がはれた感じがする場合はあります。普段と違った感じが強い場合は診察を受けてください。
経済的な理由で体外受精を受ける前に人工授精の限度回数をこえた場合どうすればいいですか?
人工授精は確率の点からすると、5〜6回程度が目安ですが、限度は特にありません。他の方法として、妊娠しにくい原因にもよりますが、一時期(3か月程度)治療を休んでリフレッシュ、抗精子抗体を調べる、腹腔鏡検査で(初期の)子宮内膜症や骨盤内に癒着がないか調べる(腹腔鏡は健康保険が適応されます)、医療機関を替えてみる(タイミング法、人工授精、体外受精すべてどの医療機関でも同じではありません)などが考えられます。
結婚5年目で妊娠しましたが流産しました。不妊治療を受けた方がいいでしょうか?
結婚して避妊もしていないのに5年目で初めて妊娠されたということは、何か妊娠しにくい要因があると推定されます。
避妊期間を除いて不妊期間が一般に1〜1年半続けば、治療に踏み切った方がよいと思います。流産後の不妊期間がどれ位か判りませんが、あなたの年齢が30歳以上であれば、直ちに治療を受けられるようお勧めします。
着床のベストな時期は?またその時に激しい運動や不規則な仕事は駄目ですか?
着床の時期はおよそ決まっていて、着床の窓とか胚受容期と呼ばれています。ヒトの場合は排卵日を0日とした場合、排卵後7日±2日、つまり排卵してから5〜9日目と考えられます。標準周期(28日型月経周期)でいうと、生理が始まってから19〜23日目の5日間に相当し、これを着床期と考えて頂いて結構です。
着床期に激しい運動や不規則な生活をするとホルモンの変調をきたし易いのでなるべく避けて下さい。ホルモンの変調があると、排卵や受精がうまくいって着床し得る胚が子宮内に入って来ても、子宮内膜側の受け入れ態勢がうまく整わず、着床の窓がタイミングよく開かなくて、胚側の着床可能時期と子宮内膜側の受け入れ可能時期がうまく同調せず、結局着床しなくなります。ただし、普段行っている日常生活程度なら問題ありません。
黄体ホルモン等の薬の種類はどうして決まるのですか?
黄体ホルモン剤は種類が多く、当クリニックで扱っているものでも10種類(普段よく使用する内服薬で4種類)あります。大きく分けて黄体ホルモンだけのものと、黄体ホルモンと卵胞ホルモンの両方が含まれたものがあり、それぞれに作用の強いものとやや弱いものがあります。
黄体ホルモン剤は、主に子宮内膜に作用して胚の着床を助けますが、個々の方、そして同じ方でも個々の周期の子宮内膜やホルモンの状態を考えて、お薬を選択します。たとえば卵胞が大きくなり切らずに排卵して子宮内膜も若干薄いような場合は、強い目の黄体ホルモンと卵胞ホルモンの合剤を処方したり(排卵後早い時期にお薬を飲むとかえって着床を阻害するので注意が必要)、子宮内膜の厚みも十分なのに検査で少し黄体ホルモンが低い場合は、弱い黄体ホルモンだけのお薬を飲んでもらったりなどです。
排卵期や高温期の白いかたい粘液は異常ですか?
高温期の白くてかたい粘液は異常ではありません。排卵前の子宮頸管粘液は、量が0.2〜0.3ml以上で牽引性(粘液が糸を引く長さ)15cm以上が妊娠するために良い、と産婦人科の本には書いてありますが、実際はそれ以下の方でも妊娠されています。どこまでが妊娠可能な限度かは難しいですが、排卵前に毎周期白くてかたい粘液しか出なくて、ヒューナーテストが良くないようでしたら、人工授精が妊娠への早道かも知れません。
排卵日が一定でないのはどうしてですか?
たとえば、28日型の標準周期では、前半のおよそ14日間が低温相で後半のおよそ14日間が高温相となっています。多くの場合、その境の日、つまり低温相の最終日に排卵が起こります。前半の14日間に卵胞が発育成熟し、卵胞から出て来る卵胞ホルモン(エストロゲン)が体温中枢に働いて基礎体温を下げ、後半の14日間は排卵後卵巣にできる黄体から出てくる黄体ホルモン(プロゲステロン)が体温中枢に働いて逆に基礎体温を上げるので、基礎体温曲線が2相性になるのです。
さてご質問の排卵日が一定でないのは、卵胞の発育、成熟するのに要する期間が一定でないことを意味します。高温相の期間は比較的一定に保たれていますが、これは排卵後にできる黄体の寿命がおよそ14日間と安定しているからです。これに対し卵胞の発育と成熟に要する期間は、ときに安定せず幅があります。卵胞の発育と成熟をコントロールしているのは、下垂体から分泌されている性腺刺激ホルモン(FSHとLH)ですが、このホルモンの出方をコントロールしているのは、下垂体よりさらに上の方にある性中枢(視床下部と言います)から分泌されているホルモンのひとつ、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)です。この性中枢が感情中枢や摂食中枢に近いため、感情やストレスなどの精神活動や運動などの身体活動や食事、あるいは季節などの自然環境の影響をうけます。だから同じ人でも月経周期毎の排卵日は必ずしも一定せず、排卵日が早くなることも遅くなることもあります。そして月経から次の月経までの期間は排卵までの期間の長短によって決まるのです。
このような理由で排卵日が一定しません。大抵の場合は低温相が長くなりますが、逆に短くなって9〜11日目に排卵することもあります。それは前の周期に排卵に至らなかった比較的大きな途中まで発育した卵胞が残っていてこれが排卵するためです。そこで月経が始まって2〜5日目頃に残っている卵胞の大きさや数を超音波で調べるのです。このような残存卵胞の中にある卵は、変性して駄目になっている場合もありますが、中には生き残って排卵することもあります。直径13〜15ミリ位の卵胞が残っている時には、卵胞の発育状態を追跡し、排卵のタイミングを逸しないように注意します。時には、卵胞ホルモン(エストロゲン)を測って残存卵胞が変性しているか生き残ってその周期に排卵するかどうかの目安を付ける場合もあります。
もうひとつ排卵日が早くなるのは更年期が近づいた場合です。この時期になると下垂体のFSHの出方が多くなり、その分だけ卵胞に対する刺激が強くなりますから卵胞発育のスピードが早くなるのです。比較的高齢の方であれば、一度月経が始まって2〜5日目のFSHを測って、まめに卵胞の発育状態をみて、排卵の時期を逃さないよう注意する必要があります。
子宮内膜症で生理痛がひどく半年間ボンゾールを服用しました。服用を中止して2〜3か月ですが自然に生理が来ません。黄体ホルモンで人工的に生理を起こしていますが、排卵や妊娠は可能でしょうか?また自然な生理は再開しますか?
黄体ホルモンで人工的に生理を起こしている間は、ほとんど排卵は起きないでしょう。ただし、卵胞ホルモンを併用せず、黄体ホルモンの開始時期が、生理が始まって13〜14日以降など遅い場合は排卵することがあります。したがって妊娠に結びつく可能性も低いです。もともと視床下部、下垂体、卵巣、子宮などに問題がなく高プロラクチン血症もなければ、近々排卵も生理も再開すると思います。
ところで、ボンゾールで半年間治療したあと初めての排卵は、妊娠の大きなチャンスです。一日も早く妊娠を望まれるのでしたら、hMGの注射などで排卵を起こして積極的にチャレンジするのが良いと考えます。子宮内膜症が重症の場合は、思いきって体外受精を受けられるのもひとつの方法です。
クロミッドは下垂体性無月経の人に効果がないのですか?
基本的には効きません。下垂体性無月経というのは、本来脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(FSH、LH)が出ないため、卵胞を発育させたり排卵させる指令が卵巣に行かない状態で、卵巣の方はこれらのホルモンに反応する力は持っています。だからFSHとLHの注射(hMG注射)を使って直接、卵巣を刺激して卵胞を発育、成熟させ排卵を起こすことが出来ます。
一方クロミッドは、下垂体がFSHやLHを分泌する力を持っているものの、そのリズムが乱れている場合に、リズムを元に戻すことによって卵胞発育を促そうというものです。だから性腺刺激ホルモンを分泌する潜在能力を持っている場合には有効ですが、そうでないと無効です。リズムが乱れていると排卵までの期間が延長して月経と月経との間隔が長くなったり、さらに乱れが強くなると排卵や月経もなくなることがあります。
FSHやLHを分泌する力がどの程度障害されているかを知る検査が、ダブル・テストです。これらの性腺刺激ホルモンの分泌を司っているのは、脳下垂体より上方の視床下部(間脳ともいいます)にある性中枢から出るホルモン(ゴナドトロピン放出ホルモン=GnRH)です。ですからGnRHを少量注射して、採血によりFSHとLHの出方を調べるのです。ダブル・テストのFSHとLHの反応パターンによって、下垂体がどの程度機能するか判定できます。下垂体機能不全が比較的軽度の場合には、クロミッドあるいはクロミッドと他のお薬の併用で効くこともありますが、前述のhMGの注射が必要なことが多いです。
典型的な下垂体性無月経は、お産の時の出血が異常に多かった場合や催乳ホルモン(プロラクチンPRL)を分泌する腫瘍が下垂体にできたときなどで、多くはありません。下垂体性無月経と同じように、ゴナドトロピン(FSH、LH)が出なくなる状態に、視床下部性の無月経があります。視床下部は前述のように下垂体へ指令を送るところですから、そこからうまく指令が出ないとやはり無排卵、無月経となることがあります。原因はストレス、急激な減量、過度の運動などで、頻度としてはむしろこちらの方が多いと言えます。視床下部性の場合は、程度にもよりますがクロミッドやクロミッドと他の薬剤の併用が有効な場合も多々あります。
下垂体性でも視床下部性でも、hMG製剤の注射はよく反応するのですが、卵胞が一度にたくさん出来すぎる割りに良い排卵が起らない、あるいは良い卵子が出ないということがしばしばあります。この場合は、hMG製剤のうちLH成分の多いものを上手に組み合わせるか、場合によっては卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)によって、本来卵巣から出るホルモンの周期を人工的に作る治療(カウフマン療法といいます)を2〜3か月強力に行い、FSH、LHに反応する前の段階の卵胞を準備する必要があります。
重複子宮、子宮内膜症、高プロラクチン血症なのですがタイミング法だけでは無理ですか?
重複子宮は、少なくとも片方の子宮が十分発育していればそれほど心配する必要はありません。また、高プロラクチン血症もお薬でコントロールできる範囲なら問題ないでしょう。問題なのは子宮内膜症の病巣の状態です。チョコレートのう胞だけならタイミング法で妊娠されることもありますが、骨盤の中、特に子宮の後ろや卵巣、卵管の周囲などに病変があると妊娠の妨げになっている可能性は大きくなります。そういった病変が疑われる時は、腹腔鏡下に確定診断と治療を行うか薬物療法を行うのが良いでしょう。
治療中に新たに投薬を受ける場合は、その都度担当医に副作用をご確認ください。注意しなければいけない副作用として、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)があります。hMGの注射で卵胞を発育させて、hCGの注射で排卵を誘発した時に、しばしば起こります(クロミフェンでも、ごく稀におこりますが軽症です)。卵胞が一度にたくさん発育すると、そこからエストロゲン(卵胞ホルモン)が大量に出て、その働きで体に水分が貯留し、しかも血管の中からおなかの中などに水分が移動し腹水や重症では胸水が溜まってしんどくなります。程度の軽い場合は、外来で点滴治療などにより軽快しますが、最も重症になりますと血液が濃縮されて血栓症の危険があります。治療医側はOHSSの発症に十分注意して診療していますが、hMG、hCGの注射を受けて卵胞がたくさんできた時は、急におなかが膨らんできた、ウエストがきつくなってきた、おしっこの量や回数が減った、胃のあたりがとても痛い、寝ているより座っている方が楽、息が苦しいなどの症状があれば診察を受けてください。
もうひとつ自然妊娠より不妊治療の副作用で頻度が高いものとして、多胎妊娠があります。排卵した卵の個数によりますが、クロミフェン単独周期やクロミフェン+hMG周期では、15%以下が多胎で、しかもそのほとんどが双胎です。当クリニックではクロミフェン周期でも多胎率は3%以下です。hMG注射で排卵誘発を行った場合はやや高い確率で、約5%程度となります。体外受精では、移植する胚の個数を原則として3個以内(ほとんどの場合1個)に制限していますので、妊娠された場合、約95%の方が単胎、5%の方が双胎です。
不妊治療によるからだへの影響として、通院のストレスで体調を崩すという話はよく耳にします。なるべくストレスにならないよう、私たちスタッフも気をつけますが、皆さんも趣味や他のことで気を紛らわせたりお友達をつくるなど、どうか工夫してこの一時期を乗り切ってください。
昔、妊娠中絶をしました。以降妊娠しません。治療すれば妊娠は可能でしょうか?
今後の妊娠の可能性について、昔の妊娠中絶と関係ある場合とない場合に分けてお答えします。ただし、関係ある場合は非常に稀だと思います。
関係があるとした場合、妊娠中絶手術そのものと関係している場合と術後の合併症に関係している場合が考えられます。中絶手術は、子宮内膜の全層ではなく生理の時に剥脱して経血として排出される子宮内膜の層までを手術的にそぎ落とすのです。だから最も深い層は残しておき、この層から内膜が再生してくるのです。あまり深くそぎ落とすと、この層までが手術時にかき出されてしまうので、子宮内腔に癒着が起きたり(これをアッシャーマン症候群といい、子宮卵管造影でわかります)あるいは内膜再生不良のため、いくらホルモン投与しても厚くなりません。そんな場合はその後の月経量が少なくなります。但しこのようなことは1000人に1〜2人程度で極めて稀です。また貴女の場合は1回だけですが、何回も妊娠中絶を重ねると同じことが起こり得ます。
術後の合併症に関係するのは感染です。感染が卵管に及ぶと卵管炎を起こして癒着や閉塞を来たします。さらに骨盤腹膜に及ぶと骨盤腹膜炎を起こして、やはり癒着のため卵管機能に悪い影響を残します。ずいぶん昔はしばしばありましたが、今ではほとんどありません。子宮卵管造影をしてみれば、およその見当がつきます。
次に以前の中絶と関係がないとした場合、配偶者の精子の問題が考えられます。ご質問でははっきり分かりませんが、パートナーが代わった後妊娠しないとすれば、現在のご主人の精液検査を是非受けてみて下さい。結婚するまでの間、複数のパートナーと交渉があった場合には、クラミジアなどの感染を受け、これが原因で不妊になっている可能性も否定できません。またパートナーが同じでも、中絶後の不妊期間が長ければ精液の性状も変わっていることが予想されますので、一度精液検査を受けられることをお勧めします。
卵巣が腫れ易いのですが体質に関係ありますか?また治療を続ければ腫れはましになりますか?
不妊治療で卵巣が腫れる場合のほとんどは、排卵誘発剤に卵巣が過剰に反応して一度に多くの卵胞が発育してしまう時です。クロミッドの内服でも稀にみられますが、大抵は卵胞発育を促進するためhMGの注射を打ち、(特に最後にhCGの注射で排卵をさせた時)に起こります。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)という排卵障害で特にテストステロン(男性ホルモン)が高い方や、視床下部性無月経などゴナドトロピン(FSH、LH)が下垂体から出ない或いは出にくい人になどは、そうでない方に比べて卵巣が腫れやすいと言えます。
通常は、治療を続けても、注射に卵巣が反応して腫れやすい状況は改善されません。PCOSは、腹腔鏡下に卵巣の白膜(卵巣表面の皮)を焼灼すると一時的に少し改善されることもありますが、基本的に排卵誘発法を工夫するしかないと思います。視床下部障害が重症の方や下垂体性無月経の方、PCOSで重症の方以外は、クロミッドやその他の薬剤を工夫して投与することで、卵巣が腫れることなく単一排卵(一つの卵胞だけが育って排卵する)や2〜3個程度の排卵へもって行けるケースがしばしばあります。生理の5日目から5日間クロミッドだけを投与して、卵胞が発育しないから「クロミフェン無効」と結論づけて、hMGの注射をどんどん打つというのは賛成できません。卵巣の腫れを少なくするためにも、クロミッド使いの上手な医師にかかりましょう。
治療のため少しずつ薬が増えていきます。のちに副作用が起きませんか?
Q 不妊治療における副作用・・、の項をご参照ください。その他、のちに起る副作用として、注射によって一度に多くの卵胞を発育させる治療を何度も何度も繰り返し行うと、閉経が早くなるとの説もありますが、個人差があり一概には言えません。
不妊治療をやめる時期、目安はないですか?
女性側と男性側に分けてお答えします。女性側については、原則として排卵のある月経がある限り治療は可能です。卵子の数は精子とは違って限られており、年齢とともに減少しますが、閉経(月経がなくなる)年齢に個人差があるのと同じように、排卵がなくなる年齢にも個人差があります。卵巣にどれ位の卵子が残っているかは、月経開始3日目の血液中の卵胞刺激ホルモン(FSH)を測定することによって目安が立ちます。
男性側については、男性更年期(アンドロポーズ)と言って性機能が衰える時期があることは確かです。しかし少数でも精子は作られていますから、顕微授精を用いれば妊娠は可能です。これとは別に年齢とは関係なく原因不明の無精子症があります。この場合、手術により精巣から小さな組織片を採って精子を得、この精子を用いて顕微授精を行うことが近年可能となっています。しかし、組織片中に成熟した精子がある場合とない場合があり、成熟した精子がない場合には現在、顕微授精は行えません。将来は未熟な精子細胞を体外で精子にまで成熟させる方法が開発される可能性はあります。
しかしながら、不妊治療は人によってストレスや経済的負担が大きいのも事実です。ご夫婦でよく相談してください。

男性不妊編

主人がアレルギー(花粉症)の薬を服用しています精子に影響はありますか?
精子への影響は考えられません。服用しているお薬の種類や量にもよりますが、抗アレルギー剤として抗ヒスタミン剤や副腎皮質ステロイド剤(プレドニン)がよく使われると思われます。アレルギー症状が強い場合には服用量や回数が増えますから、不妊治療中であることを担当医にはっきりと告げることをお勧めします。なお、卵子に対する影響も精子と同じくないと考えて結構です。
また、ある種の抗がん剤などは、精子の数や運動率を著しく低下させることがありますが、受精した場合の胎児への影響はほとんどないとされています。男性側が服用することで、胎児に異常が生じる可能性が指摘されたお薬は極めて少なく、痛風発作に対する治療薬のコルヒチンと乾癬、魚鱗癬などの角化症治療薬のチガソンぐらいですが、その二つも現在は否定的な見解が多いです。
幼少時、ヘルニアや停留精巣の手術を受けた人では、不妊治療を受けると妊娠できますか?
ご主人が幼少時ヘルニア(脱腸)の手術を受けられ、その時精管の損傷を受けて閉塞性無精子症になられた方の精巣上体精子を用いて顕微授精を行い妊娠、出産されたケースはあります。
停留精巣の手術を受けられた方では、ヘルニアと異なり精巣が高温(体温)にさらされていたわけですから造精機能障害を来たしている可能性があります。泌尿器科で十分な検査と診察を受け、成熟精子が認められれば妊娠可能です。
精子の数、運動率に対する治療はどのようなものがありますか?また日常生活において注意することはありますか?
薬物療法と手術療法があります。漢方薬、ビタミン剤、ホルモン剤などの薬物療法によって、効果が認められる場合もありますが、精液所見の劇的な改善はあまり期待できません。泌尿器科の診察で精索静脈瘤が見つかった場合は、手術(日帰りまたは1泊入院)で改善されることもよくあります。
日常生活で気をつけることは、ストレスを溜めないことです。現代社会においては難しいですが・・。
精液所見の改善がうまく行かずタイミング法だけで妊娠に至らない場合は、思い切って人工授精や体外受精、顕微授精へチャレンジされる方が妊娠への早道です。
精子を洗浄濃縮すると6時間しか受精能力がないというのは本当ですか?
洗浄濃縮した精子をそのまま精子培養液(人工授精の時もこれを用います)中に浮遊させ37℃で保存した場合、およそ20〜48時間あるいはそれ以上、生存しています。ところが、人工授精の場合1日遅れて排卵するとなかなか妊娠に結びつきません。その理由は、精子の洗浄濃縮過程で寿命が短くなるのではなく、精子を子宮の中に入れるとキャパシテーションといって受精能の獲得が起りますが、このような反応を起こした精子は10数時間しか生きられなくなるからです。6時間というのは少し短い気がしますが、人工授精をした精子はなるべく10数時間以内に卵子と出会う必要があるわけです。
当クリニックでは、人工授精の翌日の基礎体温が上昇しない場合は、その日のうちにもう一度人工授精を行なっていますが、先体反応を起こしていない精子を再度人工授精で補うことで、受精の機会を増やす目的があるからです。また体温が上昇した場合も排卵の確認を行って、確実な人工授精を心がけています。
1か月前に凍結した精子を治療に用いても異常はないですか?
人工授精を行うには、少なくとも運動能を持った精子が一定数以上必要です。凍結精子を融解すると精子の運動率が低下するので、人工授精に用いるのはあまり実用的ではありません。ご主人の精液所見が正常なら、数回の精液を凍結保存しておき、これを一度に溶かして使うことは可能かも知れません。
実際において使用可能なのは顕微授精です。顕微授精は、ごく小数の元気な精子さえ得られれば可能ですから、ご主人の出張などで採卵当日来院できない時は予め凍結保存しておくことは可能です。−160℃で保存するので期間は関係ありません。
また、たとえ動いていてもDNAに傷があるなど駄目な精子は、一旦凍結して融解すると除かれるので、顕微授精の場合はむしろ凍結・融解をしたあとの精子を使った方がよいのです。ただし高度の乏精子症の方は、顕微授精でも凍結精子が利用できない場合があります。
乏精子症でY染色体異常が10%程度あるそうですが、人工授精や体外受精でも遺伝しますか?
精子を造る機能(造精機能=精子形成能)の障害にY染色体異常が関係しているのは、以前から言われていましたが、詳しいことはわかっていませんでした。Y染色体の数や形の異常など大きな染色体異常は、普通の染色体検査で検出できますが、最近になって、通常の染色体検査では判らないけれども、遺伝子診断技術を使って初めて判るY染色体異常もあることが次第に明らかにされて来ました。これをY染色体微小欠失といい、Y染色体上の無精子症因子(AZF)領域に見つけられています。この場合、身体の異常は現れませんが、造精機能だけが侵されます。これが原因の患者さんは現在、無精子症や重症の乏精子症の方の約10%程度を占めると考えられていますが、Y染色体微小欠失の検査は特殊な研究機関以外では一般に行われていません。
しかし、このような方でも人工授精では確率が少ないのですが、顕微授精を用いると妊娠して子供を持つことができます。問題は授かった子が男の子である場合、Y染色体の微小欠失が遺伝して、その子がまた乏精子症や無精子症になる可能性があることです。閉塞性以外の無精子症の方や重症の乏精子症の方は、顕微授精を受けるときにその事を考え、夫婦で十分話し合って決めて下さい。

体外受精編

体外受精の費用はどの位ですか?ローンはありますか?また保険適用になるのはいつぐらいですか?
通常の点鼻薬と注射による排卵誘発ですと、注射代から胚移植まで含めて(胚凍結は別として)約30〜45万円くらいです。当クリニックでは、採取した卵子の数や顕微授精を行った数により料金が異なります。詳しくは、当クリニックのホームページや待合室の料金表をご覧ください。また、受付でお問い合わせいただいてもかまいません。ローンはありませんが、採卵までに外来費を、胚移植までに残りの費用をそれぞれお支払いいただいております。保険適応に関しては、残念ながらまだ目途が立っていません。
高齢の場合の、卵のエイジング(老化)について教えて下さい?
年齢による卵のエイジングの主な原因は、卵細胞質の老化と卵を取り囲む透明帯という殻(ニワトリのたまごの殻のようなもの)の老化です。卵細胞質には卵黄といって受精して発育していくために必要なエネルギーが蓄積されていますが、加齢によりこれが酸化される(酸化ストレス)と変質してエネルギー源としての働きが悪くなってきます。酸化ストレスを防止するにはビタミンCなどの抗酸化剤を服用すると良いともいわれています。
また、殻である透明帯は、加齢により厚くなったり硬くなったりする事があり、着床直前(胚盤胞)まで発育した胚がこの殻を破れず着床できないことがあります。体外受精では、透明帯を化学的に溶かして薄くしたり、機械的に裂孔を作り破れやすくする透明帯開口術という方法があります。
採卵は全身麻酔ですか?
本来の全身麻酔は、眠っていただくと同時に筋弛緩剤で自発呼吸を止めて人工呼吸器で管理を行うことを言います。これは通常、開腹手術や腹腔鏡手術の際に行う麻酔で、体外受精の採卵の時はここまで大掛かりな(呼吸を止める)麻酔を必要としませんが、眠ってはいただく程度の麻酔をかけます。当クリニックでは、強力な痛み止めと、近年開発された日帰り手術用の眠り薬(吐き気などなく非常に気分良く醒めます)で完全に意識を無くして行いますので、痛みは全く感じません。
体外受精の妊娠率とは1回目のことですか?
そうです。正確には1移植周期あたりの妊娠率です。
なお、妊娠の判定の際、臨床妊娠と化学妊娠という2つの表し方がありますが、妊娠といえば通常は臨床妊娠のことです。つまり胎児を入れている袋(胎嚢)が超音波で確認されてはじめて妊娠と判定するよう学会などで決められています。
これに対して、尿や血液の妊娠反応が陽性になった段階のものを化学妊娠といいますが、この段階では胎嚢が確認される前にごく初期の流産に終わる方も含まれるので、正確には妊娠と言えず、妊娠率を計算する際には分子にしてはいけないことになっています。当クリニックのデータはすべて、胎嚢が確認された場合を妊娠としています。
自宅が遠方なのですが注射を近くの病院で受けるのは可能ですか?
可能です。紹介状を書かせていただきますので、ご遠慮なくお申し出ください。ただし、ごく稀に断られるケースがありますので、注射をしてもらえるか確認が必要です。なお、注射代(手技料)の相場はおよそ1500〜3500円程度です。
体外受精など保険適用外の治療の補助金について教えてください。
体外受精、顕微授精、凍結胚移植など、高度生殖補助医療と言われる治療に対しては現在各自治体を通じて助成金が支払われる制度があります。詳しくは受付にお問合せください。
二段階胚移植の長所と短所について教えて下さい。
胚が着床する前には、胚から様々な信号が出て、その存在を子宮内膜に伝えて胚の受け入れ準備を整えるよう指令します。逆に子宮内膜の方からも、これに応答していろいろの合図を出して胚の受け入れ、つまり着床の準備状態が整ったか否かを知らせます。こうすることによって着床のタイミングをお互いに調整しているのです。これをクロス・トーク(対話)と呼んでいます。
二段階胚移植の原理は、移植予定の3個の胚のうち比較的良くない(グレードが低く発育速度も遅い)2個の胚(4〜8細胞期に達している)を第一段階で移植して、あらかじめ子宮内膜とクロス・トークをさせて内膜側の準備状態を整えておきます。最も質の良い胚を1個、さらに培養を続け胚盤胞にまで体外で発育させ、第二段階でこれを採卵後5〜6日目に移植するという方法です。
二段階胚移植の長所は、胚盤胞移植を併用しますから移植当たり50〜60%程度と高い着床率が報告されています。しかしその一方、短所としては第一段階で2個移植した残り1個の胚がうまく胚盤胞まで育ってくれる保証がないことです。胚盤胞まで発育する途中で駄目になる胚があることも事実で、世界レベルでは二段階移植が一段階移植よりも確かに良いとは認知されておりません。 4〜8細胞期胚を胚盤胞まで子宮内で発育させるのと、体外で発育させるのと何れが有利か分かれ道となりますが、現在では多胎妊娠を防ぐ観点から胚盤胞に育てた胚を1個移植する方法が主流となりつつあります。
現在の所、二段階移植の妊娠成功率は一段階移植と変わりませんが、着床不全の方には行ってみる価値があると思います。
体外受精では新鮮胚移植よりも子宮内膜を調整して凍結胚移植をしたほうがいいですか?
新鮮胚移植、凍結胚移植、どちらも妊娠率にそれ程大きな違いはありません。(当クリニックや他の多くの施設の治療成績で、凍結胚移植の妊娠率が新鮮胚移植の妊娠率より若干低いのは、凍結胚移植の場合1度目の新鮮胚移植で妊娠された方が対象から除外されるからです。)凍結胚移植の方が良い場合として以下の4つがあります。
(1)黄体ホルモンが早くから上昇する場合。具体的に言いますと、hMGの注射で卵胞を発育させ、そのあと最終的に卵子を成熟させるためにhCGの注射に切り替えますが、この日(午前に採卵なら、通常採卵日の2日前)の黄体ホルモン値が1.30を超えていて、なおかつ採卵日の黄体ホルモン値も10.00を超えている場合です。黄体ホルモンが上昇すると、子宮内膜では着床準備が始まります。子宮内膜は着床準備を始めると胚を受け入れられる期間が決まります。また、胚の方も子宮に着床できる期間というのがあります。採卵前に黄体ホルモンが上記の値以上に上昇すると、子宮内膜側の受け入れ可能な期間と胚側の着床できる期間にずれが生じ、妊娠率が極端に低下しますので、この場合は胚をすべて凍結し、後日あらためて子宮内膜を準備して凍結胚移植をした方が良いのです。
(2)中等症以上の卵巣過剰刺激症候群(ご存知ない方は体外受精開始前に必ず医師にご確認ください)が予想される場合。着床や子宮内膜の問題とは関係ありませんが、たとえば卵胞が20個以上、卵胞ホルモン値も5000以上の場合などは、卵巣過剰刺激症候群を起こしやすく、卵巣が腫れた状態で妊娠するとさらに悪化して重症になる場合もありますので、胚をすべて凍結保存する方が良いでしょう。
(3)一度に採卵できる卵子の数が1〜2個と少なく、1個の受精卵を移植しても妊娠されない場合。胚が3個になるまでストックして移植することがあります。
(4) 普段、超音波で見て子宮内膜がきれいな方で、たまたま採卵周期の内膜があまりきれいでない場合。しかし、こういうケースは稀です。
体外受精の治療中での日常生活の注意点はありますか?
日常生活については、胚移植後着床が完了するまでのおよそ10日間は、激しい運動など無理をしない方が良いかもしれません。しかし、現実には胚移植の頃の子宮内膜は厚く、しかも電子顕微鏡でみると内膜表面は細かい毛が密集している状態です。毛の生えた前面と後面の子宮内膜で胚を挟み込むようになるので、簡単には落ちません。
他の注意点としては、卵巣過剰刺激症候群です。急にお腹が張ってきてウエストがきつい、おしっこの量や回数が極端に減った、胃のあたりが非常に痛い、息苦しい、寝ているより座っている方が楽などの症状が出れば早めに治療を受けられている施設に連絡してください。
体外受精の反復不成功例に対する特殊検査とは具体的にどんな検査ですか?
まず、排卵誘発法が適切であったか、形態の良好な胚であったか、胚移植はスムーズかつ確実に行われたかを検証する必要があります。これらに問題がなく、反復不成功の場合は、以下の2種類の検査があります。
胚と子宮内膜との免疫的な相性が悪いことが考えられ、NK細胞活性検査と自己抗体検査を行います。これらはいずれも、妊娠しても初期に流産を繰り返す不育症の方に対する検査でもあります。
着床にはホルモンだけでなく免疫機能も関係していることが判って来ました。着床に関係した免疫細胞には何種類かありますが、そのうちNK細胞(ナチュラルキラー細胞)は、胚や胎盤の細胞を攻撃して着床を妨げたり、着床しても流産させる免疫細胞です。だからこの細胞の活性が強いと、胚や内膜に表面上問題がなくても、いくら体外受精を繰り返してもなかなか成功しないといったことがあり得ます。以前当クリニックで調べた結果、長期不妊の方でNK細胞活性が逆に低過ぎる場合があることも判りました。それには別の免疫的理由があると考えています。
次に、自己抗体検査について説明します。普通の場合は自分の体の組織や細胞を攻撃する抗体はできませんが、ときに自分の体の成分を異物と認識して攻撃する抗体が作られることがあります。そうなると、胎児組織を攻撃するだけでなく、胎盤を取り囲む細胞に供給されている血液を固まりやすくするのです。自己抗体には多くの種類がありますが、当クリニックでは少なくとも8種類の抗体(抗カルジオリピン抗体IgG、IgM、β2GP1複合体抗体、ループスアンチコアグラントなど)を測っています。
なおこれらの特殊検査には保険が適用できず、費用もかかりますので最低必要な項目だけに限っていますが、治療を進めるときに、さらに夫婦の白血球の型などについての追加検査が必要なこともあります。
醍醐渡辺クリニックの最近の妊娠率がよくなったのはどうしてですか?
体外受精や顕微授精、凍結胚移植などの高度生殖医療では、排卵誘発法、胚(受精卵)培養、胚移植の3つが成功のための重要な要素です。当クリニックでは、一人一人に一番適した排卵誘発を行い、正確にホルモン値をモニターしながら最適の時期に採卵します。他の多くの施設の様に決まった注射の量で卵胞径だけをたよりに採卵を行ったりしません。胚培養では熟練したスタッフが胚の発育に最も適した培養環境で受精卵を育てます。培養装置も他のほとんどの施設で使用されている(本来、がん細胞など生き延びる力が強い細胞のために作られた)ものでなく、培養環境の変化にデリケートな人の胚専用に開発されたもので、受精卵を個別に管理できる(取り違えの防止にも役立つ)特殊な装置を使っています。胚移植においても、可能な限り移植カテーテルの位置を確認し、細心の注意をはらって移植します。カテーテルが入りにくい方には、あらかじめ子宮の入り口を広げるなどの処置を行っています。平成11年頃から一つ一つこれらの工夫を積み重ね、翌年から成果が表われて来たのだと思います。現在も様々な工夫を思案中です。
タイミング法や人工授精、手術療法などの一般不妊治療も、ここ数年成績が伸びています。この要因もやはり、一人一人に適した治療を心がけている事と、医師をはじめとするスタッフの技術が向上したことでしょう。
人工授精で半年治療しましたが妊娠しませんでした。体外受精で妊娠できるでしょうか?
当クリニックでは、あきらめずに治療を続けていただいた場合、95%以上の方が妊娠されています。その内訳はタイミング法が約25%、人工授精が約10%、体外受精が約60%です。それぞれのご夫婦で原因や年齢が違いますので一概には言えませんが、上述の計算からしますと人工授精を半年行った時点で妊娠されない方が、全体の約65%おられることになりますが、60%の方が体外受精で妊娠されます。つまりあなたがこれから体外受精を受けられた場合、およそ5回まで(多くの方は3回まで)に60/65=92%の確率で妊娠することになります。あきらめずに私たちといっしょにがんばりましょう。
体外受精を6回受けました。卵は2〜3個しか採れず2回は受精しませんでした。こんな状態でも妊娠は可能でしょうか?
6回の体外受精のうち毎回卵は2〜3個しか採れず、6回の中2回は採れた卵のいずれも受精しなかったとのご質問と受け止めてお答えします。
いくつかの要素を検討する必要があり、一概には述べられませんが、卵巣の予備能力の目安である抗ミューラー管ホルモン(AMH)はどのくらいでしょうか。AMHがたとえば5以下など低下している場合は、採卵個数を増やすことは困難です。そうでない場合(あるいはそうであっても)、排卵誘発剤のhMG注射の量を450単位まで増やす、ブセレキュアなどの点鼻薬(GnRHa)をウルトラショート法にしてみる、(効果は不確かですが)卵巣の血流を増やすためにバファリンやその他の薬剤を併用してみる、フェマーラやクロミッドなど飲み薬と少量の注射にしてみる、などの方法が考えられます。
次に4回受精した時の胚の状態はどうだったでしょうか。分割スピードが早くグレードも良い胚を移植しているのに妊娠に至らなければ、着床不全が考えられ、別の項で述べている反復不成功例に対する特殊検査を行うとともに、移植時の透明帯開口術を行ったり、胚を凍結保存でストックし新鮮胚と合わせて二段階移植(難治性不妊の方で稀に有効なことがあります)をする、あるいはダナゾール(子宮内膜症の内服薬)を12週間服用後に胚移植を行うなど、試みる価値があると思います。毎回、形態良好とは言えない胚しか育たない場合は、前述のような排卵誘発の工夫を加えたり、培養環境を変えてみる(培養環境を変えることは施設の変更を意味しますが・・)必要があると思います。
いずれにしましても採卵が可能であれば、まだ妊娠の可能性はあると思います。
顕微授精を受けるのに、予約してからの待ち時間はありますか?また費用はどのくらいですか?
当クリニックでは待ち時間(日数)はありませんが、脳下垂体ホルモン検査や精液検査などの基本検査のデータは必要です。また、通常の点鼻薬とhMGの注射で排卵誘発を行う場合、前周期の高温期から内服薬の前投与により準備を行います。
費用は(平成14年11月現在)通常の体外受精に加えて卵子3個までは3万円、4個目からは1個につき1万円で最高10万円までとなります。詳しくは当クリニックのホームページをご覧いただくか、診療時間中に受付までお問い合わせください。
2年前、醍醐渡辺クリニックで体外受精を受け妊娠、出産しましたが、その時2個しか卵が採れませんでした。もう一度受けようと考えていますが、次も卵子の数は少ないでしょうか?
採卵できる卵子の数は、排卵誘発剤の量や種類を工夫することで多少増やせるかも知れませんが、前回の成績から考えて基本的に少な目になると思います。少ない卵子でも、最適な時期に採卵し確実に受精させ、良い環境で培養して丁寧に移植すれば、またきっと妊娠できるはずです。
体外受精の反復不成功例はその後どのような治療があるのか教えて下さい。
Q48体外受精の反復不成功例に対する特殊検査・・、の項および、Q53体外受精を6回受けました。・・、の項をご参考ください。

その他

ジョギングの影響はありますか?
ジョギングをすると体力がつき、全身の血流や代謝が改善され、気分も爽快になるので良いでしょう。とくに太り気味の方にはお勧めします。ただしジョギングしなければという気持ちが強くて、かえって心の負担にならないよう注意して下さい。また、着床期にはすこし控えた方が良いとの意見もあります。
醍醐渡辺クリニックの不妊治療で妊娠された最高年齢は?
一度も出産されたことがない方で、不妊治療によって妊娠され無事出産まで行かれた方は45歳・11ヶ月(妊娠時)です。最高で50歳の方が妊娠されたこともありますが、流産でした。いずれも体外受精で妊娠された方です。
ひとつの病院にこだわらず他院も受診したほうがいいですか?
難しい問題ですが、今受診されている医療機関がどれくらい不妊治療に力を注いでいるかによります。次から次へと病院を替えるいわゆるドクターショッピングはよくありませんが、たとえ大きな病院でも不妊治療にあまり力を入れていない施設に掛かっておられる方は、力を入れている施設に替わるべきです。治療成績がぜんぜん違います。
不妊治療の良い医療機関の選び方は、この分野に精通した専門医が複数いること、(心理面だけでなく医療についての)カウンセリング体制が整っていること、熟練した胚培養士がいることなどが上げられます。軽い不妊症で、比較的簡単な治療で妊娠できる場合でも医師の判断が大切ですし、妊娠しにくい難治性の不妊症では高度の治療が行える体制が整っていることが必要です。また、シンポジウムでお話した事も参考にしてください。
不妊と飲酒は関係ありますか?ワインはどうですか?
適量なら全く関係ありません。具体的にはアルコール量を日本酒換算で、1日一合まで、週2日は飲まない日をもうけ、月1回以内でたまに深酒、くらいなら問題ありません。またワインも良いでしょう。
不妊治療を受けるとき大学病院と専門的な個人病院やクリニックのメリットとデメリットを教えて下さい。
大学病院でも個人病院でも、基本的にはその病院が不妊治療にどれだけ力を注ぎ、体制を整えているかによります。たとえば、単に体外受精をしているといっても、その技術レベルには相当大きな開きがあるのが現状です。
一般的に、大学病院では複数の医師による診療が行われ、その分様々な考え方があり、少しずつ味付けの違った治療を受けることができたり、数人の医師が話し合って方針を決めることもあり、その点はメリットだと思います。しかし、同じ医師の診察日が週1回となると、一つの月経周期をどういった治療で行くかに関しては、一貫性の点で難しいかも知れません。また、大学病院や大きな病院では小回りが効かない事が大きなデメリットです。たとえば、土曜日や休日、夜間の診療はありませんし(不妊治療では大きな欠点!)、時間外の注射も大変だと思います。タイミング法や人工授精では、排卵日にぴったり合いにくいことも予想されます。
これに対して、専門的な個人病院あるいはクリニックでは、多くの場合一人の医師(当クリニックでは3人です)が診療を行うため、一貫性がありメリットとなりますが、ごく稀にピントがはずれていたり、少し方針を変えると妊娠に結びつく方に同じ治療を続けてしまう場合があります。しかし、大学病院や大きな病院と違って、小回りの点では、はるかに有利です。ほとんどのクリニックが夜間や土曜日も診療を行っていますし、施設によっては休日にも診察や人工授精を行います。タイミング法や人工授精では、排卵日は待ってくれませんし、体外受精でもベストの採卵日は1日です(ただし、体外受精では1日くらい前後しても妊娠の可能性はあります)。
大学病院、個人病院、クリニックの別にとらわれず、通院のし易さ、評判、治療成績などで選ぶのが良いと思います。
良い卵子を作るための漢方や食事等について教えて下さい?
脳下垂体から出る性腺刺激ホルモンの低下による排卵障害(原因として急激な体重減少やストレスなど)や多のう胞性卵巣症候群には温経湯が、高プロラクチン血症には温経湯や当帰芍薬散が、またその他の不妊症でも温経湯、加味逍遥散、当帰芍薬散が有効な場合があります。
食事については、栄養バランスの良い食事、ビタミンE(アボガド、キャベツ、うなぎ、えびなど)、イソフラボン(大豆)が妊娠しやすいからだづくりに効果的と言われていますが、はっきりとした根拠があるわけでなく、あくまで参考程度とお考えください。
健康食品(クロレラ、アロエなど)は有効ですか?
有効という話は、聞いたことがありませんが、効果がないという話も聞いていません。
仕事のためストレスがあります。妊娠しにくい状態でしょうか?
ストレスの程度にもよります。過度のストレスが連続する状態になりますと、人のからだは知らず知らずのうちに防御反応を行い、今存在する個体(あなた自身)を守る方向へと働きます。その結果、次の世代を残すための生殖能力が低下することも考えられます。しかし、現代社会に生きる人たちはほとんど、何らかのストレスを感じて生活しています。ご夫婦で相談して、何とかこれを解消する良い方法を見つけましょう。
抗ミューラー管ホルモン(AMH)って何ですか?
卵巣内では胎児期から多数の原始卵胞が眠っており、これらが思春期になると順番に発育をはじめ排卵に至ります。この過程の中で発育を開始したごく初期の卵胞から分泌されるのが抗ミューラー管ホルモン(AMH)です。このホルモンは、発育を開始した卵胞の数が多ければ高値を示し(多嚢胞性卵巣の方は特に高くなります)、逆に少なければ低値となるため卵巣予備能(*)の指標になると考えられています。
従来の下垂体ホルモン検査(LH、FSH)や超音波検査にミューラー管ホルモン検査を加えることにより、より詳しく卵巣予備能が判定できるようになり、また体外受精時の卵巣刺激法を決める際にも参考になります。新しい検査なので健康保険が適用にならずやや高額(5,250円)ですが、有意義な検査ですのでぜひ早めに受けられることをお勧めします。

* 卵巣予備能
卵巣が赤ちゃんになりうる卵子をどれくらい排卵する能力があるかをあらわす言葉です。「卵巣年齢」や「卵巣の老化」といった言葉と同じ意味です。卵子のもとになる原始卵胚は胎児期にすべて出来上がってしまい、以後増えることはないので、卵巣予備能は年齢とともに低下することになります。この傾向は30歳以降に著明となり、45歳から50歳にかけて卵巣予備能はほぼゼロとなり、妊娠は不可能になります。卵巣予備能を根本的に改善する手だては今のところありませんので、卵巣予備能が大幅に失われる前に、適切な治療を受けることが妊娠成立へ必要条件になります。 発育卵胞数とAMHの年齢分布
  • 不妊治療・産科・小児科醍醐渡辺クリニック
  • 〒601-1375 京都市伏見区醍醐高畑町30-15
  • TEL 075-571-0226 / FAX 075-572-1484
  • 地下鉄東西線・醍醐駅下車 1番出口を出て南へ徒歩1分
  • 醍醐バスターミナルより南へ徒歩3分駐車場 31台